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五島列島から「人が生きる」を考える

執筆者の写真: te to ba <手と場>te to ba <手と場>


元青年海外協力隊でバングラデシュで村落開発普及員として活動していた副代表の梅沢の記事が掲載されましたので転載します。(日本も元気にする青年海外協力隊OB会)


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バングラデシュの村の小さなチャドカン(茶店)には人力車引きから政治家、障がい者、子供から老人まで一杯のチャイを求めて出入りする。そこでは政治からゴシップまであらゆることが話題に上る。私は休憩や仕事終わりにトタンを組んだだけの粗末な店に座り、人々の物語に耳を傾け、観察するのが日課だった。


当時も今も私の中には「人は何のために生きるのか?」という疑問がある。

日々の空回りする活動とチャドカンでの人間観察の根底には、いつも同じ問いが反復していた。


帰国後、私は「映像」の世界に進んだ。世界や日本中を取材し、NHKで放送されるドキュメンタリーを作る日々。なぜ映像か?というと、映像は人間の言葉にならない感情を一瞬でリアルに伝える。私がベンガルの村で見ていた現実は、人々の表情の中にあった。若者は海外出稼ぎを夢見、詐欺にあい、若い娘は雀の涙ほどの給料を求めて縫製工場に働きに出る。そして工場は倒壊する。政治は腐敗し、政党同士の泥沼の殺し合いが起き、賄賂を払わなければ村の電気は数週間、止まった。日常的な光景だった。

悲惨だが、そんな現実も乗り越えていく「図太さ」「したたかさ」が人々の表情にはあった。

そこに生きることの本質があるような気がした。

人間の「生きる情念」のようなものを伝えたいと思った。


時は流れ、5年前から五島列島の小さな港町に暮らしている。五島の番組を作ったことが縁で、また別の生き方を選んだ。映像は「観察者」に徹しなければならないが、隊員のように「プレイヤー」として現実と関わっていく気持ちがまた生まれた。島では空き家を改修してカフェやホステルを運営し、「島全体を結婚式場に」というコンセプトのもと結婚式事業など、人口流出の進む島に交流人口を生み出す多様なチャンネルを作る活動をしている。でも私はたぶん、チャドカンの主人をやっているような気がする。

雑多な背景を持った人々が毎日、行き交い、彼らを通して「人は何のために生きるのか?」を私は考える。「ずっと住み続けられる島を作る」にはどうしたらいいか? 今は考えている。



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〈プロフィール〉

梅沢 圭

合同会社tetoba副代表

平成16年度3次隊/村落開発普及員/バングラデシュ

大学卒業後、協力隊に参加。帰国後は日本映画学校(現日本映画大学)にて映像を学び、TVディレクターとしてNHKのドキュメンタリーや紀行番組の制作に携わる。五島列島の番組を制作したことをキッカケに移住。現在はビジネスパートナーと2018年から合同会社tetobaを運営。




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​©te to ba <手と場> 2018

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